参考になる本を教えてください

2020.05.30
 

アレキサンダー自身による著作は以下の4点です。

1.Man’s Supreme inheritance (1918)
2.Constructive Conscious Control of the Individual(1923)
3.The Use of the Self (1932)
4.The Universal Constant in Living (1940)
このうち、2が「自分のつかい方」というタイトルで晩成書房から翻訳がでました。翻訳者の鍬田かおるさんご自身がアレクサンダーの先生であり、言葉の選び方なども洗練されています。

何といっても本人による著作は、アレキサンダーテクニックを理解するうえでは欠かせない資料です。しかし、そう読みやすいものではないので、ロナルド・ブラウンによっ上記4冊を要約したものもあります。この要約本はアレキサンダー自身が読んで内容をチェックし、正当な要約と承認しています。

Authorized Summaries of F.M. Alexander’s Four Books Edited by Ron Brown

それでも、上記の本は入門書としてはやや読みにくいかもしれません。
アレクサンダーテクニークの全体像やレッスンで行われていることなどの意味は、むしろ解説書の方がわかりやすいでしょう。

今や翻訳されているアレクサンダー関連本は、日本語オリジナルのものも含めると結構な量で、私もすべてをフォローしていません。15年前にはほとんどなかったことを考えると、急激な普及に驚きます。
私はもしアレクサンダーテクニークをもし本当に理解したいなら、まずレッスンをおすすめします。書物で得られる知識より、実践から得るものの方が多いので。最近、始めてレッスンにいらっしゃる方の中には、必ずしも本による知識があまり助けになっていないこともあるのに気付きます。
レッスンを受けて後、やはり知識の整理やもっと深く知りたい、あるいはやっぱり本を読みたい、ということでしたら、ご自身で自分にあった本を探し出すのが一番適切な本に巡り会うやり方だと思います。
なぜなら、今日本で出版されている本は本当に色々な角度からアレクサンダーテクニークにアプローチしているので、ご自身の目にとまり、興味を持ったものこそが最良のものといえるのではないでしょうか。色々な立場の人が自分のスタンスで本を書いたりしているので、その人の解釈が加わり、結果的に、同じアレクサンダーテクニーク解説書といっても随分違ったものになっています。

何がよい本か、というのはその人にとって役立ったもの、というほかないのではないでしょうか。今やアマゾンなどで簡単に検索できます。
が、それではあまりに不親切なので、少しだけあげると、

『アレクサンダー・テクニーク』(ウィルフレッド・バーロウ著/伊東博訳)誠信書房

解説書の中ではいわば古典的。著者のウィルフレッド・バーロウは医学博士であり、彼の妻であるマージョリー・バーロウ(アレキサンダーの姪)とともに、初期の頃からアレキサンダー自身に手ほどきを受け、医学的見地からの考察をすることで、テクニックの洗練に寄与した。アレキサンダーの生存中から彼の後継を託され、彼の死後はマージョリーとともにテクニックの正しい継承、水準を守るために尽力した。
本書はアレキサンダーテクニックの原理を医学的見地から検証したもので、レッスンを受ける前、受けてからの体の変化が記録された写真など、実証的、論理的に書かれている。

『ボディ・ラーニング』(マイケル・ゲルブ著/片桐ユズル訳)
訳書の副題に「分かりやすいアレキサンダーテクニク入門」とあるように、アレキサンダー自身について、テクニックの理論、用語など、非常に分かりやすく書かれており、網羅的に理解するにはよい助けになると思う。
著者のマイケル・ゲルプはアメリカ人で、イギリスに渡ってアレキサンダー・テクニックを学び、STAT公認教師となった。本書ははじめ、修士論文として書かれ、その後、イギリス、アメリカでの彼自身の教師としての経験―アレキサンダーテクニックを使ったジャグル、水泳、一輪車乗りなどのアクティビティに関する考察も言及され、彼自身も述べているように、現在のアレクサンダーテクニークの教授法の二つの大きな流れの橋渡し的な役割がある。

翻訳されたものの中で私が一番気に入っているのは

ペドロ・デ・アルカンタラ著/風間芳之訳

『実践 アレクサンダーテクニーク 自分を生かす技術』

『音楽家のためのアレクサンダーテクニーク入門』

邦題が『音楽家のための〜』と原題では副題の方をメインにしており、確かに音楽家にとって大変役に立つ本ですが、誰にとっても役に立つ本です。論理的で実践部分も丁寧に書かれています。結構厚い本なので、初めて読むには少し大変かもしれません。
その意味では、『自分を生かす技術』のほうがより、一般の人にもわかりやすく、またアレクサンダーテクニークの原理や用語について明確に論理的に説明され、入門書として適切だと思います。

*原題は『間接的な手順(アプローチ)』です。これだと確かに入門者には何のことだかわかりにくいと思いますが、このタイトルはアレクサンダーテクニークの本質を表しています。

そのほかに、ボディ・マッピングの本がたくさん出版されています。
その代表格は「音楽家ならだれでも知っておきたいからだのこと」(バーバラ・コナブル)でしょう。
からだの構造、機能などわかりやすく非常に参考になりますが、ボディ・マッピングはアレクサンダーテクニークではありません。(アレクサンダーテクニークはボディ・マッピングではない、ともいえます)
ボディ・マッピングはその言葉通り、「からだの地図をつくる」というものです。「からだに対する誤った認識があやまった使い方を導く」という考えから、「からだにたいする正しい認識」を教えてくれ、アレクサンダーテクニークを理解するのに、大変役に立ちますが、アレクサンダーテクニークは「からだにたいする正しい認識」というだけにとどまりません。もっと、広くて深い領域を扱っています。

どんな本を読むにせよ、わからない部分があって当然です。レッスンを受ければ、わかることもあるかもしれません。
逆に、レッスンでわからなかったことが、本を読んで,少し整理されることもあるかもしれません。
書物による知識と実践を相互に補完しあえるようであればいいと思います。
もう一つ大切なことは、私はわからない部分はすぐにわからなくてもいい、わかった気にならないことではないか、と考えています。