アレクサンダーテクニークはとても繊細で微妙な意識変化、「気づき」を扱うものなので、他の方がいることで、影響が出てしまいます。現在通っていらっしゃる方ご本人が、自分の家族や友人に紹介したいなどの理由で希望される以外、原則としてお断りしております。アレクサンダーテクニークは、ご自分が体験してはじめて理解できることがたくさんありますので、まずはお気軽に体験してみて下さい!
この質問にお答えするのはとても難しいです。
たとえばピアノを習ったり、水泳教室に行ったりする時はどうでしょう?楽譜が読めるようになって、右手でメロディがなぞれるようになればいいのか、ショパンやリストが弾けるようになりたいのかなど、目的やレッスン頻度、取り組み方など個人差が大きいです。アレクサンダーテクニークも同じです。行き先もその方法もご自分でお決めください。私はご自身が決めた行き先に到着するよう、お手伝いをします。
どんな方も、まず基本は簡単な動きの中で自分が行っている不適切なやり方のパターンに目を向け、それをやめ、いいコーディネーションで動く状態を体験することからはじめます。
そのために、まずチェアワーク(椅子から立つー座る)やテーブルワーク(横になった状態で自分のどこに不必要な緊張があるか知り、それをやめるため)を行います。
これはいわば、スケールやエチュードのようなものです。ヴァイオリンの演奏技術を習得するために、いきなりパガニーニから始めないのと同じです。正しい弓のもち方、楽器の構え方を学び、スケールなどで粒のそろった美しい音色を出すことを積み重ねて、はじめて難しい曲が弾けるのと同じです。
そしてひとたび、「いいコーディネーションで自分を使う(動く)」ということがわかれば、それはどのような動きにも応用できます。ただ、楽器の演奏はこれまで熱心に取り組んでいればいただけ、自分のやり方に対しての強い思い込みや、習慣がこびりついているものなので、必要に応じて、楽器を使ったレッスンも可能です。
アレクサンダーテクニークは自分自身のくせ、習慣、パターンに対する気づきを深めていくものですから、とても個人的なものです。またその変化は繊細で微妙なものですから、基本は1対1です。
一方グループレッスンは、他のひとを観察する利点があり、自分だけでは気付かなかったことがわかることもあります。大勢でやるために、一人一人の習慣に深く関与するには効率的ではないかもしれませんが、「他者」がいる状況でおきる自分のパターンを知ることもできるかもしれません。集団で共通の思い込みを共有したり、何となくそのムードに流されてしまったりしなければ、他の方の経験や意見を聞いて理解を深めたり、新たな発見を得られるでしょう。
「習得」という点では、プライベートレッスンのほうが効率的で深いレベルになると言えるかもしれません。ピアノの技術を習得するのに、個人レッスンの方が適しているのと同じでしょう。
アレクサンダーテクニークスタジオ東京では、グループレッスンやワークショップのほか、1対1のプライベートレッスンに通っていらっしゃる方対象に、テーマを決めてグループ勉強会を不定期で開いています。
イギリスの政府機関(NHS等)大学、一般医、STAT(アレクサンダーテクニーク教師協会)が連携して、慢性的な腰痛患者に対する治療効果に対する大々的な研究が行われ、2008年世界的に権威ある医学雑誌に発表されました。 その結果、経験あるSTAT教師による,1対1のアレクサンダーレッスン24回は、痛みの軽減、効果の持続性、予防効果の面で最も優れていました。(比較は針、マッサージ、一般的な治療)
これまでに何度となく、同様の調査結果が報告されていますが、2008年にBritish Medical Journal (BMJ)という世界的に権威のある医学雑誌に報告された調査結果は、各種機関が連携しあい、規模が大きく、調査法も非常に詳細なものであり、結果の信憑性がこれまで以上に科学的に証明されました。
簡単にその内容をまとめます。
実施した主体:英国医学研究評議会MRC(Medical Research Council) とNHS(National Health Service)研究開発ファンド (両方とも政府機関)
研究チーム:英国ブリストル大学のシャープ教授とサウサンプトン大学のリトル教授、キャサリン・バラード(STAT)フランシス・オックスフォード(STAT)
協力者:
STAT(Society of Teachers of the Alexander Technique )
アレクサンダーテクニーク教師(STAT会員) 59人
イングランド全体の一般医 64人
被験者 64人のGPからランダム抽出された慢性的、再発的腰痛患者579人
時期 2002年から2年間
なお、アレクサンダーテクニークは経験あるSTAT教師が1対1のレッスンを行ったもの
(調査方法)
被験者を①医師による通常の診療②24回のアレクサンダーテクニークレッスン③6回のアレクサンダーテクニークレッスン④6回のマッサージのグループに分け、3ヶ月後、12ヶ月後に効果を検証する。また、それぞれのグループの半分は療法士の指導のもとでエクササイズを行い、それぞれエクササイズとの組み合わせと単独で行った場合との比較も検証された。
(検証方法)
痛みによって損なわれた活動、生活の質、痛みの日数などをローランド・モリス障害スコアという方法を使って、数値化
(結論)
経験あるSTAT教師による1対1のアレクサンダーレッスン24回は、慢性的再発的な腰痛に対し、機能に大きな改善が認められ、腰痛の日数も減少し、最も効果的であった。
それに次ぐ効果は、6回のアレクサンダーレッスンとエクササイズの組み合わせで、1年後の効果は24回のアレクサンダーレッスンの約72%に達した。
マッサージは痛みに対して3ヶ月の効果があったが、機能に対する効果は1年後には認められなかった。
痛みの軽減、効果の持続性、予防効果というすべての点において、アレクサンダーテクニークの効果が最高だった。
詳細は以下のHPをご覧ください。
BMJホームページ
アレクサンダー教師になるためには、一般的には教師養成の学校を終了します。それとは別に学校の卒業証書だけでなく、教師としての専門性を客観的に第三者の立場から審査するのが国際認証機関です。現在STATとその提携協会、それにATIという2つの団体があります。2つの団体は少し考え方が違います。
STATは、学校にも基準が必要と考え、学校開設にも様々な基準を設け、許認可制をとっています。その後の運営にも基準を遵守しているかチェックし、協会の求める基準に厳格です。一人一人の学生に対してはトレーニング期間中と卒業時に審査を行い、それにパスするとSTAT認証が与えられます。
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アレクサンダーテクニークについて学ぶための書籍は、世界中で多く出版されています。
英語が一番多く、長く読み継がれている書籍はやはり、時の流れにも耐えうる真実が書かれている古典と言えるでしょう。
前ページでご紹介した時から、時間が経ち、日本語の翻訳も増えました。訳語も、こなれて読みやすいものが増えたように思います。
「アレクサンダーテクニーク F.M.アレクサンダーによる著書4作の要約」 ロン・ブラウン著 監修:八木道代 ガイアブックス
前ページでご紹介した、アレクサンダーが承認した著書4作の要約を翻訳したものです。
「自分の使い方」以外、アレクサンダー自身の著作物の翻訳がないので、彼の思想の全体像を著作から知るためには英語と格闘しなければなりませんが、要約を日本語で読めることはとてもありがたいです。
アレクサンダー自身の考えと、要約者(ブラウン)が「彼はこう述べている」と表現している部分が混在しているため、視点が定まらないなどのご苦労はあったと、監修者の八木さんは前書きでおっしゃっていますが、ご自身がアレクサンダーの先生であり、ご自身の教授体験を下敷きにした訳語選びは、私たちの理解を深めてくれます。
「キャリントン先生のあふれる言葉」 ウォルター・キャリントン 鈴木優子訳 監修:安納献
原典はThinking Aloud という、カリントン先生がクラス向けにテーマを決めた講話をジェリー・ソンダクというアメリカの教師が書き物にまとめたものです。語りかけなので、シンプルにわかりやすい。翻訳されたのがアレクサンダーの先生なので、日本語も読みやすいです。(私にはやはり、キャではなくカリントンです。ごめんなさい)
カリントン先生のクラスには、私も何度かお邪魔し、クラスの後半の時間に先生がいらしてレクチャーをされた時のことを思い出しました。柔らかい物腰に、イギリス人らしいちょっとビターな表現。その雰囲気が日本語にされており、懐かしい思いを味わうことができました。
「アレクサンダー・テクニーク 〜ある教師の思索〜」 パトリック・マクドナルド著 訳:細井史江 幻冬社
原典はAlexander Technique ~as I see it~(私の見たままのAT, 私の見解)この本は、1955 年から87年までの30年以上、マクドナルド先生がご自分の教授経験で考えたメモから、1冊の本になったもので、私たちが知りたいと思う疑問に全て、端的に簡潔に答えてくれています。それゆえ、初版から何度も品切れになると、しばらく途方も無い金額で売買されていたかと思うと、再版されます。アメリカなど、別の国でも出版されるのは、やはり英語の強みですね。
アレクサンダーテクニークとは何か、原理について明確に定義されているのが、ロングセラーの理由でしょうか。この定義が、「アレクサンダーテクニーク教育」の枠組みとして、STATはじめ、教師トレーニングの場で使われています。
(拙訳が原典の素晴らしさを損ねていないといいのですが…)
ここまでは「古典的」なものです。
今年、日本語訳が出版され、現代的なAT紹介本として面白く読ませていただいた本をご紹介します。訳者の楠さんからいただくまで、この本の存在も、著者も知らなかったのは私の不明です。
「日常にいかすアレクサンダー・テクニーク〜すべてはがんばらなくてもできる〜」 ピーター・ノウブス著 訳:竹内いすゞ・楠洋介
アレクサンダーテクニークの原理についての説明が、著者本人のイラスト入りでとてもわかりやすく書かれています。私自身は、アレクサンダーテクニークを「日常生活の中でより良い自分の使い方を学ぶ」ものと教わってきましたし、自分もそのように教えています。そして、私にとってATの本質は、実存主義の文脈で考えていたので、我が意を得たり、でした。もし、「体の使い方」というイメージを私たち教師が与えているのだとすれば、考え直さなければならないと、強く思いました。訳者のお二人も、教師としてご活躍されており、そのご経験から問題提起をされたこと、心強いです。もちろん、生徒さんがご自分の目的として、腰痛や演奏技術の向上や、姿勢の改善を求めて、レッスンにみえるのは当然のことです。でも、私たち教師は、その結果を得たいと思うなら、どんな取り組みが必要か、より深い「自分の(「体の」ではなく)」課題に向き合うことを伝えるのが仕事です。
とても当たり前のことですが、その大切さを丁寧に伝えてくれる本だと思います。
他にも、日本語の本は増えているようです。
全てを網羅できないので、私の知る範囲でご紹介させていただきました。
アレキサンダー自身による著作は以下の4点です。
1.Man’s Supreme inheritance (1918)
2.Constructive Conscious Control of the Individual(1923)
3.The Use of the Self (1932)
4.The Universal Constant in Living (1940)
このうち、2が「自分のつかい方」というタイトルで晩成書房から翻訳がでました。翻訳者の鍬田かおるさんご自身がアレクサンダーの先生であり、言葉の選び方なども洗練されています。
何といっても本人による著作は、アレキサンダーテクニックを理解するうえでは欠かせない資料です。しかし、そう読みやすいものではないので、ロナルド・ブラウンによっ上記4冊を要約したものもあります。この要約本はアレキサンダー自身が読んで内容をチェックし、正当な要約と承認しています。
Authorized Summaries of F.M. Alexander’s Four Books Edited by Ron Brown
それでも、上記の本は入門書としてはやや読みにくいかもしれません。
アレクサンダーテクニークの全体像やレッスンで行われていることなどの意味は、むしろ解説書の方がわかりやすいでしょう。
今や翻訳されているアレクサンダー関連本は、日本語オリジナルのものも含めると結構な量で、私もすべてをフォローしていません。15年前にはほとんどなかったことを考えると、急激な普及に驚きます。
私はもしアレクサンダーテクニークをもし本当に理解したいなら、まずレッスンをおすすめします。書物で得られる知識より、実践から得るものの方が多いので。最近、始めてレッスンにいらっしゃる方の中には、必ずしも本による知識があまり助けになっていないこともあるのに気付きます。
レッスンを受けて後、やはり知識の整理やもっと深く知りたい、あるいはやっぱり本を読みたい、ということでしたら、ご自身で自分にあった本を探し出すのが一番適切な本に巡り会うやり方だと思います。
なぜなら、今日本で出版されている本は本当に色々な角度からアレクサンダーテクニークにアプローチしているので、ご自身の目にとまり、興味を持ったものこそが最良のものといえるのではないでしょうか。色々な立場の人が自分のスタンスで本を書いたりしているので、その人の解釈が加わり、結果的に、同じアレクサンダーテクニーク解説書といっても随分違ったものになっています。
何がよい本か、というのはその人にとって役立ったもの、というほかないのではないでしょうか。今やアマゾンなどで簡単に検索できます。
が、それではあまりに不親切なので、少しだけあげると、
『アレクサンダー・テクニーク』(ウィルフレッド・バーロウ著/伊東博訳)誠信書房
解説書の中ではいわば古典的。著者のウィルフレッド・バーロウは医学博士であり、彼の妻であるマージョリー・バーロウ(アレキサンダーの姪)とともに、初期の頃からアレキサンダー自身に手ほどきを受け、医学的見地からの考察をすることで、テクニックの洗練に寄与した。アレキサンダーの生存中から彼の後継を託され、彼の死後はマージョリーとともにテクニックの正しい継承、水準を守るために尽力した。
本書はアレキサンダーテクニックの原理を医学的見地から検証したもので、レッスンを受ける前、受けてからの体の変化が記録された写真など、実証的、論理的に書かれている。
『ボディ・ラーニング』(マイケル・ゲルブ著/片桐ユズル訳)
訳書の副題に「分かりやすいアレキサンダーテクニク入門」とあるように、アレキサンダー自身について、テクニックの理論、用語など、非常に分かりやすく書かれており、網羅的に理解するにはよい助けになると思う。
著者のマイケル・ゲルプはアメリカ人で、イギリスに渡ってアレキサンダー・テクニックを学び、STAT公認教師となった。本書ははじめ、修士論文として書かれ、その後、イギリス、アメリカでの彼自身の教師としての経験―アレキサンダーテクニックを使ったジャグル、水泳、一輪車乗りなどのアクティビティに関する考察も言及され、彼自身も述べているように、現在のアレクサンダーテクニークの教授法の二つの大きな流れの橋渡し的な役割がある。
翻訳されたものの中で私が一番気に入っているのは
ペドロ・デ・アルカンタラ著/風間芳之訳
『実践 アレクサンダーテクニーク 自分を生かす技術』
『音楽家のためのアレクサンダーテクニーク入門』
邦題が『音楽家のための〜』と原題では副題の方をメインにしており、確かに音楽家にとって大変役に立つ本ですが、誰にとっても役に立つ本です。論理的で実践部分も丁寧に書かれています。結構厚い本なので、初めて読むには少し大変かもしれません。
その意味では、『自分を生かす技術』のほうがより、一般の人にもわかりやすく、またアレクサンダーテクニークの原理や用語について明確に論理的に説明され、入門書として適切だと思います。
*原題は『間接的な手順(アプローチ)』です。これだと確かに入門者には何のことだかわかりにくいと思いますが、このタイトルはアレクサンダーテクニークの本質を表しています。
そのほかに、ボディ・マッピングの本がたくさん出版されています。
その代表格は「音楽家ならだれでも知っておきたいからだのこと」(バーバラ・コナブル)でしょう。
からだの構造、機能などわかりやすく非常に参考になりますが、ボディ・マッピングはアレクサンダーテクニークではありません。(アレクサンダーテクニークはボディ・マッピングではない、ともいえます)
ボディ・マッピングはその言葉通り、「からだの地図をつくる」というものです。「からだに対する誤った認識があやまった使い方を導く」という考えから、「からだにたいする正しい認識」を教えてくれ、アレクサンダーテクニークを理解するのに、大変役に立ちますが、アレクサンダーテクニークは「からだにたいする正しい認識」というだけにとどまりません。もっと、広くて深い領域を扱っています。
どんな本を読むにせよ、わからない部分があって当然です。レッスンを受ければ、わかることもあるかもしれません。
逆に、レッスンでわからなかったことが、本を読んで,少し整理されることもあるかもしれません。
書物による知識と実践を相互に補完しあえるようであればいいと思います。
もう一つ大切なことは、私はわからない部分はすぐにわからなくてもいい、わかった気にならないことではないか、と考えています。
職業やジャンルを問いません。プロ、アマも関係なく、必要とするすべての方です。
これまでに、音楽家、俳優、ダンサーといった芸術系の方、アスリートなどスポーツをされる方が、能力の向上や、本番で実力を発揮したい、という目的でいらっしゃいました。
また、腰痛、肩こり、頭痛、腱鞘炎といった慢性的な痛みや不快症状の方、側彎症、バネ指の方、どもるくせのある方もいらっしゃいます。
職業も学校の先生、お医者様、サラリーマン、主婦の方、学生の方などいろいろです。
セラピストやマッサージといった方がご自分の施術を改善する為にいらっしゃることもあります。
年齢も小学生から80代の方までいらっしゃいます。
これまで世界中でアレクサンダーテクニークのレッスンをどんな人が受けているかについては、
「レッスンを受けた著名人」もご覧ください。