参考になる本について 更新

2023.06.12
 

アレクサンダーテクニークについて学ぶための書籍は、世界中で多く出版されています。
英語が一番多く、長く読み継がれている書籍はやはり、時の流れにも耐えうる真実が書かれている古典と言えるでしょう。
前ページでご紹介した時から、時間が経ち、日本語の翻訳も増えました。訳語も、こなれて読みやすいものが増えたように思います。

「アレクサンダーテクニーク F.M.アレクサンダーによる著書4作の要約」  ロン・ブラウン著 監修:八木道代 ガイアブックス
前ページでご紹介した、アレクサンダーが承認した著書4作の要約を翻訳したものです。
「自分の使い方」以外、アレクサンダー自身の著作物の翻訳がないので、彼の思想の全体像を著作から知るためには英語と格闘しなければなりませんが、要約を日本語で読めることはとてもありがたいです。
アレクサンダー自身の考えと、要約者(ブラウン)が「彼はこう述べている」と表現している部分が混在しているため、視点が定まらないなどのご苦労はあったと、監修者の八木さんは前書きでおっしゃっていますが、ご自身がアレクサンダーの先生であり、ご自身の教授体験を下敷きにした訳語選びは、私たちの理解を深めてくれます。

「キャリントン先生のあふれる言葉」 ウォルター・キャリントン      鈴木優子訳 監修:安納献
原典はThinking Aloud という、カリントン先生がクラス向けにテーマを決めた講話をジェリー・ソンダクというアメリカの教師が書き物にまとめたものです。語りかけなので、シンプルにわかりやすい。翻訳されたのがアレクサンダーの先生なので、日本語も読みやすいです。(私にはやはり、キャではなくリントンです。ごめんなさい)
カリントン先生のクラスには、私も何度かお邪魔し、クラスの後半の時間に先生がいらしてレクチャーをされた時のことを思い出しました。柔らかい物腰に、イギリス人らしいちょっとビターな表現。その雰囲気が日本語にされており、懐かしい思いを味わうことができました。

「アレクサンダー・テクニーク 〜ある教師の思索〜」 パトリック・マクドナルド著  訳:細井史江  幻冬社
原典はAlexander Technique ~as I see it~(私の見たままのAT, 私の見解)この本は、1955 年から87年までの30年以上、マクドナルド先生がご自分の教授経験で考えたメモから、1冊の本になったもので、私たちが知りたいと思う疑問に全て、端的に簡潔に答えてくれています。それゆえ、初版から何度も品切れになると、しばらく途方も無い金額で売買されていたかと思うと、再版されます。アメリカなど、別の国でも出版されるのは、やはり英語の強みですね。
アレクサンダーテクニークとは何か、原理について明確に定義されているのが、ロングセラーの理由でしょうか。この定義が、「アレクサンダーテクニーク教育」の枠組みとして、STATはじめ、教師トレーニングの場で使われています。
(拙訳が原典の素晴らしさを損ねていないといいのですが…)

ここまでは「古典的」なものです。
今年、日本語訳が出版され、現代的なAT紹介本として面白く読ませていただいた本をご紹介します。訳者の楠さんからいただくまで、この本の存在も、著者も知らなかったのは私の不明です。

「日常にいかすアレクサンダー・テクニーク〜すべてはがんばらなくてもできる〜」 ピーター・ノウブス著 訳:竹内いすゞ・楠洋介
アレクサンダーテクニークの原理についての説明が、著者本人のイラスト入りでとてもわかりやすく書かれています。私自身は、アレクサンダーテクニークを「日常生活の中でより良い自分の使い方を学ぶ」ものと教わってきましたし、自分もそのように教えています。そして、私にとってATの本質は、実存主義の文脈で考えていたので、我が意を得たり、でした。もし、「体の使い方」というイメージを私たち教師が与えているのだとすれば、考え直さなければならないと、強く思いました。訳者のお二人も、教師としてご活躍されており、そのご経験から問題提起をされたこと、心強いです。もちろん、生徒さんがご自分の目的として、腰痛や演奏技術の向上や、姿勢の改善を求めて、レッスンにみえるのは当然のことです。でも、私たち教師は、その結果を得たいと思うなら、どんな取り組みが必要か、より深い「自分の(「体の」ではなく)」課題に向き合うことを伝えるのが仕事です。
とても当たり前のことですが、その大切さを丁寧に伝えてくれる本だと思います。

他にも、日本語の本は増えているようです。
全てを網羅できないので、私の知る範囲でご紹介させていただきました。